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a will
2011年11月24日木曜日
初恋 2
あなたに恋して変わったこと
ただぼんやりとあなたをみつめることや
なんでもない場所をなんでもなく歩くことが好きになり
会ったこともない誰かのしあわせを祈ることや
自分のまかないの範囲で誠実であることを疑わず
あらかじめ定められたやり方に倣うより
そのあやふやさをおかしむことを学んだ
それがあなたに恋して変わったこと
2011年10月15日土曜日
カフェ 昭和編
このカフェの噂には
ささやきとほほえみが寄り添う
読まれたがる本たちが
ドアを開けて読み手を誘い
マダムと食材のおしゃべりが
奥のキッチンから遠慮がちに響く
ギロチンの音に振り返ると
マスタの叩くレジスタらしい
映画から抜け出る気分で
男たちは時を求め
ポスターの女優めいて
女たちは時を捨てる
ディスプレイの謎解きに
時代の答えが見つかったかい
それより晴れの日の雨傘のように
ここで過ごしてみよう
頼りない思いはそのままに語り
信じることは軽やかに受け止めよう
ぎこちない言葉があるように
やわらかな嘘がある
あなたの隣にいる人は大切な人で
あなたの隣にいない人もまた大切な人
このカフェの噂には
ささやきとほほえみが寄り添う
私にできること
あなたたちを愛していると
心と体で言葉とぬくもりで抱きしめようか
あなたたちの心と痛みを
私にできるせいいっぱいで想像してみようか
あなたたちとともに
喜びと哀しみの多くの物語に耳を傾けようか
あなたたちのように
美しいものを美しいと語り合おうか
あなたたちが大切にしているものを
きちんと大切にしようか
あなたたちの命を守り抜く覚悟
それを笑顔で伝えようか
どれも正しいようでいて
そのどれでも足りないような気もします
2011年10月10日月曜日
引力
あなたが生まれた日
まるでこの世に初めて
引力が生まれたようだった
身近なものが繋がり魅かれあい
言葉に意味が生まれた
あらゆるものが名付けられ
それぞれが輝きを得た
だからこそ失われることに
これほど怯えてしまうのか
不器用に伝えたがる心が
おしゃべりにさせてしまうのか
あなたが迷子になる時に
互いのぬくもりを
その手が忘れないよう
今日はそのことを思い出す日なんだ
かふぇえ
この界隈のかふぇえには 怪しげな連中が
出入りしてるって 噂だぜ
棚には 霊験あらたかな経が積まれて
客の方が 品定めされるんだとよ
奥のまかないから 匂ってくるのは
天竺わたりの 抜け荷の香料だとさ
ここの主の 仕掛けそろばんをはじく音
きいたことあるかい 斬首台の物鳴りだぜ
向かいの奴は 幻燈から迷い出たにちげえねえ
なるほど 良い男っぷりじゃねえかい
おっと つれあいの色っぽい女
写し絵の怪だから 口説くのは難儀さ
それとよ おめえの目の前の変化額
閻魔さまの謎かけだから うかつに答えちゃならねえ
まあ それでもよ おいらだって何さ
ただの 唐傘の化けもんだからよお
うかつに 信じちゃなんねえ
長いべろで 嘘をつくなんざ朝飯前だ
けどな ここは存外居心地の良いところさ
おいらのお仲間も いくたりか顔をのぞかせる
あんたの隣の人 だいじょうぶかい
ほんとうに あんたの知った人かい
この界隈のかふぇえには 怪しげな連中が
出入りしてるって 噂だぜ
初恋
車窓に映るあなたを見送った あの日 僕は恋をした
言葉ではなく あなたを心で呼びかけるようになり
気に留めていなかったできごとが 見えるようになり
そのことに 戸惑いながら はじめましてと挨拶をする
あなたが 僕のその戸惑いを 花でも摘むように
ゆっくり 解いてくれたのは それからしばらく後のこと
2011年8月8日月曜日
君だけに
君だけにしか見えないものを
丁寧に言葉に乗せると
やわらかく誰かの心に残る
君だけにしか見えないものを
誰かのそれとつなげると
素敵な恋になるかもしれない
君だけにしか見えないものを
大切な秘密のように心にしまえば
君が迷った時の標になるだろう
君だけにしか見えないものを
いつか君がなくしてしまっても
きっと誰かがそれを探してくれる
君だけにしか見えないものは
息をひそめる宝のように
いつでも誰かを待っているものだから
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