2011年8月8日月曜日

君だけに

君だけにしか見えないものを
丁寧に言葉に乗せると
やわらかく誰かの心に残る

君だけにしか見えないものを
誰かのそれとつなげると
素敵な恋になるかもしれない

君だけにしか見えないものを
大切な秘密のように心にしまえば
君が迷った時の標になるだろう

君だけにしか見えないものを
いつか君がなくしてしまっても
きっと誰かがそれを探してくれる

君だけにしか見えないものは
息をひそめる宝のように
いつでも誰かを待っているものだから

2011年5月28日土曜日

掃晴娘

祈りは小さな痛みをともなう

それは誰か大切な人のことを想うから

生きることが小さな痛みをともなうから

もどかしさに心さわぐかもしれない

取り戻せない時を責めるかもしれない

だけど その痛みは

想い人の のびやかなほほえみや

交わされる柔らかな言葉で

きっと消えてしまうのだね

あした天気になあれ

あなたの心が晴れやかでありますように

2011年5月23日月曜日

何故あなただったのだろう

何故あなただったのだろう

誰かが何度も問いかけている 

何故あなたが逝ってしまったのだろう

誰もが何万回も問いかけている

答えはみつかるのだろうか

神様の言葉や図書館の暗がりに

あるのだかどうだかあやふやだ

たいがいはそのまま時を過ごすのだね

でも確かにわかることだってある

ほかの誰でもないあなたで良かったと

あなたと過ごすことができて良かったと

それは不思議と心に落ちる

だからこそきちんとお別れをしよう

ありがとうをきちんと伝えよう

神様のスパイス

今日は特別な日だと思うの
誰かがスパイスを使いこなすような

カルダモン コリアンダ ターメリック

適切な量とタイミングなのね
生まれたのがこの日でなければ
あなたと私は出会わなかったかもよ

クローブ パプリカ セロリ

たぶん神様のスパイスなのよ
おごそかなレシピがあって
あなたと私が出会ったってこと

サフラン タイム フェンネル

神様だって全部覚えていないから
ちょっとだけ私が腕をふるうわ
つまり人生のレシピね

ナツメグ ジンジャ シナモン

最後の 最後のお別れの日に
あなたに言わせたいの
ありがとう おいしかったって

オレガノ クミン バジル 

今日は特別な日だと思うの
神様がスパイスを使いこなすような

2011年5月14日土曜日

足りないもの

 
足りないものと足りているものの
境目はどこにあるのかあいまいだけど

足りないものと足りているものの
ほんのささいな違いはむしろ楽しい

それでもあなたのことは いつだって気がかりだ

伝えていないことがないか確かめたくなる
守るべき秘密を数えるくらい慎重にね

思い煩うことがないのか確かめたくなる
それは人生の天秤にかけてどれほどの重さだろう

そうだよあなたのことは いつだって気がかりだ

あなたと私の距離を測りながら
その間を繋ぐ言葉があふれていることを望むよ

あなたの居ない日々を想像するのは難しい
あなたが生まれる前のことを想像するくらいにね

足りないものと足りているものを
時々そうやって確かめることにするよ

2011年4月3日日曜日

溶けない雪だるま

 
日差しがあれば 熱に身をゆだね
しなやかな体を 取り戻す

つまり ちいさな水たまりになり
あるいは 大気にまじりあう

いずれ 海に還るにしても
あるいは 雲に還るとしても

ああ それは旅をすることだね
誰かと ひとつになることだね

時間の 鎖に繋がれたまま
永遠に その姿をとどめても

溶けない雪だるまは哀しい
溶けない雪だるまは寂しい

だから さようなら
しばしの おさらばでござる

そこで 旅人になり
あるいは 誰かと恋をする

溶けない雪だるまは哀しい
溶けない雪だるまは寂しい

2010年8月10日火曜日

NAGASAKI

 
腹の中にプルトニウムを抱え
太った男が空から降りてきた

その毒をぶちまけることで
失われたものは何でしょう

ささやかでつつましい幸せだとか
誰の 多分たくさんの人の

坂と海の街のおだやかな風景とか
そこにあった とりもどせないままの

未来に向かう子供たちの笑顔であるとか
この子の そしてあの子たちの

ささやくように秘められた想いだとか
恋人たちの 断ち切られた絆の

交わされた約束や言葉であるとか
こんにちはまた後で 果たされないままの

手の届かないほどに 愛おしく思われるすべてのもの
失われたものは 失われたままの

太った男に 哀しみはなかったのかしら
そこには 怒りでさえなかったのかしら

夕食の買い物のように 品定めされ
選ばれただけなのかしら この街は

怒りは 突き抜けてしまうと
とても 哀しく 痛むのに

いつまでも 哀しく 痛むのに