2011年4月3日日曜日

溶けない雪だるま

 
日差しがあれば 熱に身をゆだね
しなやかな体を 取り戻す

つまり ちいさな水たまりになり
あるいは 大気にまじりあう

いずれ 海に還るにしても
あるいは 雲に還るとしても

ああ それは旅をすることだね
誰かと ひとつになることだね

時間の 鎖に繋がれたまま
永遠に その姿をとどめても

溶けない雪だるまは哀しい
溶けない雪だるまは寂しい

だから さようなら
しばしの おさらばでござる

そこで 旅人になり
あるいは 誰かと恋をする

溶けない雪だるまは哀しい
溶けない雪だるまは寂しい

2010年8月10日火曜日

NAGASAKI

 
腹の中にプルトニウムを抱え
太った男が空から降りてきた

その毒をぶちまけることで
失われたものは何でしょう

ささやかでつつましい幸せだとか
誰の 多分たくさんの人の

坂と海の街のおだやかな風景とか
そこにあった とりもどせないままの

未来に向かう子供たちの笑顔であるとか
この子の そしてあの子たちの

ささやくように秘められた想いだとか
恋人たちの 断ち切られた絆の

交わされた約束や言葉であるとか
こんにちはまた後で 果たされないままの

手の届かないほどに 愛おしく思われるすべてのもの
失われたものは 失われたままの

太った男に 哀しみはなかったのかしら
そこには 怒りでさえなかったのかしら

夕食の買い物のように 品定めされ
選ばれただけなのかしら この街は

怒りは 突き抜けてしまうと
とても 哀しく 痛むのに

いつまでも 哀しく 痛むのに

2010年7月14日水曜日

トタン屋根の恋

 
つまり 君とここで出会ってしまうのだね

それは願ってもないことだけれど

なんだか こわれそうな音が

あやふやなまま 僕らの周りをただよっている

それをどうやって 残しておけばよいのか

とまどっっているんだ

詩人なら言葉に 音楽家なら音符に

そのどちらでもない僕にできるのは

ぼんやり 笑っているだけなんだ

忘れられた トタン屋根みたいにね

2010年2月27日土曜日

そら耳の空

 
土鈴の乾いた音色が空をわたる

そら耳だとわかっていても
聞き逃したくないから目を閉じた

あなたが何を望んでいたのか

その笑顔を思い描くことができるのに
答えることができない

こんな美しい空になぜあなたは逝ったのか

確かに暖かな春の日は
あなたにとてもふさわしいのだけれど