2013年11月8日金曜日

鏡

 この空を愛しく思う
緑の恵みを愛しく思う
大地と大気はそんなあなたを大
切に守ってくれる
あなたのために祈ろう
あなたのために笑おう
あなたのためにあることは
私が生きるのと同じ重さだ
愛することは鏡のように自分を照らす

しあわせのシェフ

初めて覚えた野菜の名前は 忘れてしまった
だけど知らない野菜には いつか私の指先が挨拶をする
初めてナイフを使ったとき おどおどした記憶はない
手首のスナップはすでに 刃先の加減とつながっている
レシピを舌先で転がし その日の気分と折り合いをつける
変えないために変えること それがポイント
生きることの方が よほど容易い
誰かを愛することができれば やりなおせるから
ふりむくと 作りかけの鍋
火を止めるタイミングと 秘密の隠し味
ああ しあわせには目に見える形があるらしい
おまけに 臭いと味までついてくる
私がしあわせのシェフになった日から
書きかけのレシピは まだ終わらない

世界の片隅

大統領も戦場の兵士も路上の子どもも
人間ひとりが寝転がっても
せいぜいふかふかのベッドか
夜営のハンモックか
がれきのひとかたまりもあれば足りるだろう
誰もが世界の片隅で たったひとりの自分を生きて居る
親も子も 男も女も
敵も味方も 白も黒も
友達もそうでないやつも
生まれたばかりでも 死の間際でも
たったひとりの自分で生きて居る
たったひとりで居ながら誰かとよりそって居る
ひとりだからよりそって居る
どこかで互いに結ばれて世界はしだいにつながれる
人間の取り分をわきまえて
花には花の 虫には虫の 場所を譲り慎ましく生きよう
自分の都合ばかりを言い立てて
まるで自分だけが世界の真ん中に居るような
そんな声高に叫ぶやつを 私は信じない

感嘆符

ああ、朝だと思う 毎日のことなのに
日差しがまぶしとか雨が息を湿らせるとか
小さな違いがあっても 繰り返される
ああ、驚きと戸惑いが混じった 感嘆符
仕事のちょっとした手順を 違えたり
忘れ物に気がついたり
小さな違いはあっても またかと笑う
ああ、秘密めいた気づき その感嘆符
誰かに伝えることが嬉しかったり
秘密は秘密のままに 暖める
小さな違いはあっても ドキドキする
ああ、喜びや悲しみの 感嘆符
大切なものを守ることが 誇らしくあり
大切なものをなくしてしまうことに 怯え
小さな違いはあっても 体を締め付ける
ああ、今日だと思う
自分が生まれた日大切な誰かが生まれた日
小さな違いはあっても いちばん新鮮な一日なんだ

優先座席

世界には哀しいことや辛いことであふれ
厄介ごとや悩ましいことにもきりがない
プリンセスは憂いの心で笑顔を返し
プリンスは静かに拳を固める
敵と味方はリバーシブルで
加害者と被害者は互いに孤独だ
思いが語られ耳を傾ける人がいる
自分の世界ばかりが広がると互いに窮屈だ
ちっぽけな自分でいようと思う
タンポポの黄色とツツジの紅
美しいものたちに少し席を譲 ろう
ちっぽけな自分でいようと思う
空の青と木々の緑美しいものたちに少し席を譲ろう

あなたがそこに居る

あなたがそこに居る
たったひとつのあなたがそこに居る
たったひとつのあなたがいくつも重なりあってそこに居る
呼びかける祈りにたったひとつの あなたが応えている
いくつも重なりあって応えている
波のうねりは多分そのささやきなんだろう
途切れることなく返す波は多分そのなぐさめなんだろう
私はだいじょうぶ私に不安はありません
幸せの残り火がいつだって心にあります

birthday

あなたと出会う前から
その日が来ることを知っていた
あなたが生まれる前から
ずっと待っていたようで
例えば窓の外
雨の風景を眺めながら
待ちわびる時間が長いだけ
なおさらに愛おしく
持ち合わせの言葉を尽くしても
埋めようもないほど待ち尽くして
どれほどそばに居ても
あなたを抱きしめている時でさえ
明日のあなたを待つことが
しあわせな時間なのだ